2016/11/03
2020/04/14
正規分布の性質(再生性など)とその証明
性質1:\(aX+b\)の分布も正規分布
確率変数\(X\)が正規分布\(N(μ,σ^2)\)に従うとき、\(aX+b\)は正規分布\(N(aμ+b,a^2σ^2)\)に従う。
正規分布の性質1の証明
証明
正規分布の確率密度関数を用いる。
\(X\sim N(\mu,\sigma^2)\) のとき,確率密度関数は
$$f(x) = \frac{1}{\sqrt{2πσ^2}}\exp{[-\frac{(x-μ)^2}{2σ^2}]}$$
である。ここから\(Y=aX+b\)によるYの確率密度関数\(g(y)\)を求める。
そこで変数変換 \(y=ax+b\) を考えると、 \(x = \frac{y-b}{a}\) 、 \(g(y)=f(x)\frac{dx}{dy}\) となる。また、 \(\frac{dx}{dy}=\frac{1}{a}\) であることから、
\begin{eqnarray}g(y) &=& f(x)\frac{dx}{dy} \\\\ &=& \frac{1}{\sqrt{2πσ^2}}\exp{[-\frac{(\frac{y-b}{a}-μ)^2}{2σ^2}]}×\frac{1}{a}\\\\ &=& \frac{1}{\sqrt{2πa^2σ^2}}\exp{[-\frac{(y-(aμ+b))^2}{2a^2σ^2}]}\end{eqnarray}
となる。この\(g(y)\)の密度関数は、平均 \(aμ+b\) ,分散\(a^2σ^2\)に従う。よって、確率変数\(X\)が正規分布\(N(μ,σ^2)\)に従うとき、\(aX+b\)は正規分布\(N(aμ+b,a^2σ^2)\)に従う。
性質2:標準化による標準正規分布
性質1を用いて、\(Z = \frac{X-μ}{σ}\)と変換をほどこすと、\(Z\)は平均0、分散1の正規分布に従う。これを特別に標準正規分布という。また、この変換を正規分布の標準化と呼ぶ。
性質3:正規分布の再生性
確率変数\(X\)と\(Y\)が独立に正規分布\(N(μ_1,σ_1^2)\),\(N(μ_2,σ_2^2)\)にそれぞれ従うとき、\(X+Y\)も正規分布に従う。また、その分布は\(N(μ_1+μ_2,σ_1^2+σ_2^2)\)となる。この性質を正規分布の再生性という。
正規分布の再生性の証明(積率母関数を利用)
証明
再生性は、正規分布の積率母関数を使って証明できる。
互いに独立な確率変数\(X~N(μ_1,σ_1^2)\)と\(Y~N(μ_2,σ_2^2)\)をおく。
\(X\)と\(Y\)の積率母関数は、それぞれ
$$m_X(t) = {\mathrm{e}}^{\mu_1 t+\frac{{\sigma_1}^{2}t^2}{2}}$$
$$m_Y(t) = {\mathrm{e}}^{\mu_2 t+\frac{{\sigma_2}^{2}t^2}{2}}$$
となる。
従って、\(X+Y\)の積率母関数(モーメント母関数)は、
\begin{eqnarray}m_{X+Y}(t) &=& m_X(t)m_Y(t) \\\\ &=& {\mathrm{e}}^{\mu_1 +\frac{{\sigma_1}^{2}t^2}{2}}{\mathrm{e}}^{\mu_2 t+\frac{{\sigma_2}^{2}t^2}{2}} \\\\ &=& {\mathrm{e}}^{(\mu_1+\mu_2)t+\frac{({\sigma_1}^{2}+{\sigma_2}^{2})t^2}{2}}\end{eqnarray}
と表せる。
これは、\(N(μ_1+μ_2,σ_1^2+σ_2^2)\)の積率母関数である。
積率母関数は確率分布と1対1対応する(積率母関数の一意性)ので、\(X+Y\)の分布は\(N(μ_1+μ_2,σ_1^2+σ_2^2)\)となる。
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