2016/11/23

2020/04/14

期待値の定義・性質・計算例。平均との違いも!

統計学の基礎

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確率変数\(X\)の期待値(expected value)は、\(E(X)\)や\(μ\)(ミュー)と表記され、統計学を学習する上で非常に頻繁に登場します。

期待値とは、確率変数が取る値を、確率によって重み付けした平均値です。例えば、300円の宝くじ1枚の期待値が100円であった場合、その宝くじには100円の価値が期待できるということです。とは言っても、毎回その宝くじ1枚で100円が得られるわけではありません。当たったくじ、外れたくじの総合で見て、平均すると1枚あたり100の価値であったということです。期待値という名前は、確率変数が取ると「期待」される値であることから名付けられました。

期待値の定義

期待値の定義は、離散型確率変数の場合と、連続型確率変数の場合とで、扱い方が異なります。

離散型の場合

離散型の確率変数とは、例えばサイコロの目のように、1、2、3、、、というように飛び飛びの値を取ります。この場合、その確率変数の期待値は、シグマを用いて以下のように定義されます。

\(E(X) = \displaystyle \sum_{ i  } x_if_X(x_i)\) (離散型確率変数の場合)

連続型の場合

連続型の確率変数とは例えば、身長のように連続した値を取ります。(身長の測定結果は、0.1cm刻みなど連続でないことが、実際の身長は連続量である)連続型の場合、その期待値は、積分記号インテグラルを用いて、次のように定義されます。

\(E(X) = \displaystyle \int_{ – \infty }^{ \infty } xf(x) dx\) (連続型確率変数の場合)

期待値の性質

期待値\(E(X)\)には以下に述べるような性質があります。式変形をする上でよく使うので、覚えておきましょう。

期待値の線型性

\(E(aX+bY) = aE(X) + bE(Y) \)

期待値の単調性

\( X ≦ Y \longrightarrow E(X) ≦ E(Y)\)

\(X^2\)の期待値

二乗の期待値は、二乗したものを密度関数にかけて積分もしくは、総和することで計算できます。また、三乗の場合も同様です。連続型の例を以下に挙げます。

\(E(X^2) = \displaystyle \int_{ – \infty }^{ \infty } x^2f(x) dx\)

独立な2つの確率変数に対して

積分可能で独立な2つの確率変数\(X,Y\)に対して、

\(E(XY) = E(X)E(Y) \)

が成り立つ。

期待値と平均の違い

期待値とよく似た言葉に、平均というのがあります。場合によって、期待値は平均と同じ意味で使われていたりしますが、平均は標本の平均値を指す場合もあります。

そもそも平均とは?

期待値は記号では、\(μ\)(ミュー)と表され、これは英語の平均meanの頭文字mに対応するギリシャ文字であり、このことからも期待値と平均には深い関連があることが見て取れます。

では、期待値と平均は何が違うのでしょうか?

例えば、標本サイズNの観測データ\(x_1,x_2,…,x_N\)において、期待値と平均がどのように定義されるかについて見ていきます。

母集団より、\(X = x_i\)という値が観測される確率を\(p_i\)とします。また、\(N\)回の観測において、\(X = x_i\)が観測される回数を\(N_i\)と置くと、期待値\(μ\)と平均\(\bar{x}\)はそれぞれ次の式で表されます。

$$μ =  \displaystyle \sum_{ i }x_ip_i \\ \bar{x} =\displaystyle \sum_{ i } \frac{x_iN_i}{N}$$

大数の法則から、標本サイズNが∞まで大きくなるとき、\(p_i = \frac{N_i}{N}\)となります。つまり、標本の数が∞のとき、\(μ=\bar{x}\)が成り立ちます。また、標本の数が∞というのは、標本が母集団に一致していることを示しています。よって標本が母集団と一致するとき、期待値と標本平均が等しくなる、ということです。

このことから、期待値というのは標本の背後に存在する母集団の平均に対応する値であり、標本の理論的な平均値(母集団の平均値)を表すものだと理解出来ます。また、理論的な平均値というのは母集団における平均であり、確率分布の期待値は母集団の平均値と一致します。

ここでは、離散型確率分布の例を取り上げましたが、連続型の場合であっても同じことが言えます。

関数の期待値

確率変数\(X\)が定義されているとき、関数\(u(X)\)もまた確率変数です。よって、この関数の期待値を考えることができ、離散型と連続型の場合で分けて以下のように表せます。

離散型確率変数の関数の期待値

\(E[u(X)] = \displaystyle \sum_{ i  } u(x_i)f(x_i)\) (離散型確率変数の場合)

連続型確率変数の関数の期待値

\(E[u(X)] = \displaystyle \int_{ – \infty }^{ \infty } u(x)f(x) dx\) (連続型確率変数の場合)

例題〜連続型の期待値を求める〜

例題

\(0<x<1\)において連続である、確率変数\(X\)の密度関数が
\(f_X(x) = 6x(1-x)\ \ (0<x<1)\)
と与えられているとき、\(0<x<1\)において、\(E(X),E(X^2),E(X^3),E(-3X+10)\)を求めよ。

解説

\(\begin{eqnarray*}E(X) &=& \int_0^1 xf(x) dx  \\  &=&\int_0^1 6x^2(1-x) dx \\ &=& \frac{1}{2}\end{eqnarray*} \)

\(\begin{eqnarray*}E(X^2) &=& \int_0^1 x^2f(x) dx  \\  &=&\int_0^1 6x^3(1-x) dx \\ &=& \frac{3}{10}\end{eqnarray*} \)

\(\begin{eqnarray*}E(X^3) &=& \int_0^1 x^3f(x) dx  \\  &=&\int_0^1 6x^4(1-x) dx \\ &=& \frac{1}{5}\end{eqnarray*} \)

\(\begin{eqnarray*}E(-3X+10) &=& -3E(X)+10  \\  &=&-3×\frac{1}{2}+10 \\ &=& \frac{17}{2}\end{eqnarray*} \)

(totalcount 190,536 回, dailycount 4回 , overallcount 16,505,943 回)

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統計学の基礎

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