2020/08/27

2020/08/26

【独占】AIによる野菜の生育判別システム、22年1月リリース-トーヨーHD高橋優太氏

インタビュー

ライター:


リーフレタスなど水耕栽培する野菜の生育状況などを自動で判別する人工知能(AI)を開発している企業がある。建設、不動産、農業、再生エネルギーなどを構築から運用に至るまでワンストップで提供するトーヨーホールディングスだ。

 

トーヨーホールディングスのR&Dセンター長、高橋優太氏はこのほど、AVILEN AI Trendの独占インタビューに応じ、独自AIエンジンを用いた「AI 生育状況管理システム」を2022年1月に正式にリリースする方針を明らかにした。すでにPoC(実証実験)を終えて一定の水準まで精度を高めることに成功しているという。

トーヨー羽生農園(埼玉県羽生市)

AIシステム、22年1月リリースへ

――注力するAI活用の農業(アグリ)事業について紹介してください。

アグリ事業として、水耕栽培の植物工場などを運営しており、安定品質、安定供給を実現すべく、進めている状況です。AI自社開発や、筑波大学を含むコンソーシアムとも連携したオープンイノベーションに向けた取り組みなどを実施しています。野菜の生育状況などを自動で判別するAIのリリースは2022年1月を考えています。

――開発の進捗は?

実は昨年にPoCは終えておりました。今は本開発のフェーズに入り、実運用が可能な精度が見えて、着地するところが見えている状況です。

――2022年1月にリリース予定はこれまで非公表ですね?

はい、そうですね。

――野菜を判別する仕組みは、カメラで撮影した画像を基に出来、不出来を識別するということですか?

出来、不出来の判別とともに、出荷予測までの対応を考えています。

――対象となる野菜は?

羽生農園でつくっているようなリーフレタスです。

――2022年1月の正式リリース後は、全国の農業事業者に提供すると?

同じような課題を抱える農園は多いと思いますので、ゆくゆくは展開したいと考えています。われわれはゼネコンとして、農園を建てることもできますので、すべて含めたソリューションということです。

――プロジェクトのメンバーは?

外部のリソースも含め、約十何人が動いています。

――高橋センター長の役割は?

プレーイング・マネージャーという形で、プロジェクトのQCD(品質・コスト・納期)を確保しながら、一部、AIに関する部分のソースコードを担当しています。自社にとって抑えなければならない部分の特許化なども実施しています。

――画像処理などAIモデルの開発に携わっている人数は?

全員がAIをやっているわけではありません。このソリューションは、かなりハードウエアに関わる部分が多いので、機構設計も含めて約十数人です。

「低コストで最大限の効果発揮」を検討

――苦労した点は?

AIありきで始めたのではなく、どうすればより低いコストで効果を最大限発揮できるかという基礎検討部分に時間がかかりました。AIやハードウェアも含め最適解を出すところが少し時間がかかりました。

AIだけ詳しくても、ビジネスだけ詳しくても駄目というところで、両軸を持って、スキルがないとなかなかできないというところが、苦労したところです。

ベテランに代わってAIが判断

――プロジェクトでAI活用することで期待できる効果は?

一つ目は、今の物理的に確認が難しいところを解決するということです。二つ目は、ベテランが持っているノウハウを駆使しなければ判断できないところをAIにできるようにするということです。

――AIに関する人材育成はどうするのですか?

可能であれば即戦力がほしいのですが、正直、ビジネスとAIを組み合わせて対応できる人材はなかなか市場に出てきません。基本的にはOJTで育てている状況です。

――全社でOJTで実際にAIを運用することになるのは何人ぐらいですか?

各事業部に最低1人以上のビジネスで利益を上げられるAI推進ができる人材がほしいと考えています。

あらゆるスキル必要-AIの効果的な活用には

――AIの運用を教育する方法は?

正直に言うと、特定の教育プログラムを使っているわけではありません。あくまで、実際にプロジェクトをやってもらいながら、わたしが適宜、フォローしながら進めている状況です。AIをビジネスで効果的に活かすためにはあらゆるテクニカルスキルが必要と考えていますので、スキルマップなどを用いながら、皆が個人的に、自分に足りないところを自分で探してきて、勉強してもらっています。

そして、われわれのように事業会社としてAIをビジネスに展開するうえでは技術的な知見だけでなく、ビジネス面の知識・経験や総合的な人間力、目的志向でプロジェクトを進めるマインドセットなど、非常に多岐にわたる範囲をカバーする必要があると感じていますので、スモールスタートでも良いので、やはりOJTで一通り経験する機会を与えてあげることが重要だと思います。

高橋優太氏

トーヨーホールディングス
R&Dセンター センター長

  • 国内の電機機器メーカーで電気機器の開発・設計に携わり、統計学をベースとした設計手法の社内講師を兼務した後、コンサルティングファームに移り、戦略・業務改革系コンサルとしてAIを活用したソリューション開発などの経験を積む
  • 現在、トーヨーホールディングス R&Dセンターのセンター長として研究・開発を通じて事業の成長ドライバーを創出。自社主体のAI開発のみならず、オープンイノベーションを実現すべく産学連携コンソーシアム立上げなどを実施

(totalcount 1,126 回, dailycount 4回 , overallcount 16,631,065 回)

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