2020/07/23

【独占】市場調査にAI活用、国内最大手インテージが新たな一手-佐藤健一氏

インタビュー

ライター:

創業60周年という節目に、市場調査に独自開発した人工知能(AI)を活用する新たな取り組みを打ち出した企業がある。マーケティングリサーチ国内最大手のインテージだ。

 

インテージがドコモ・インサイトマーケティングと共同開発したのは、商品パッケージのデザイン素材を組合せて最適なデザイン案を探索・生成できる「パッケージデザインAI最適化サービス」。

 

遺伝的アルゴリズムを基に、ディープラーニング(深層学習)による評価予測を用いたシステムで、AIが学習を繰り返すことで、100万通り以上の組み合せの中から、消費者が高く評価するパッケージデザイン案を探し出すという。

 

インテージ開発本部先端技術部の佐藤健一副部長はAVILEN AI Trendの独占インタビューに応じ、長きにわたりマーケティングリサーチ国内最大手として市場調査に活用している統計学や統計科学、市場調査へのAI活用、そして、「生活者の今を知る」というコンセプトの下で運営するオウンドメディア「知るGallery」などについて迫った。

デファクトスタンダードのPOSデータサービス

――インテージの強みは?

データを自社で計測・保有していることです。

データサイエンスは前処理が80%などと言われます。インテージは歴史的に、ずっとデータを自社で計測しており、基盤もあります。自社でデータを持っているからこそ、分析、モデル開発ができるのが大きな強みです。

具体的には、大規模な小売店のPOSデータ「SRI」を約30年間ずっと収集しています。POSデータを提供するデータプロバイダーと言われる会社は国内に何社もありますが、インテージのPOSデータサービスが、デファクトスタンダードになっています。

データサイエンス、AIという言葉が生まれる前から、データを使って何か解析をしたり、モデルを作るということを文化的にやっている会社ですので、いろいろな細かいノウハウが、数十年単位で蓄積していることが強みです。

新商品の需要予測は一般的に、過去データがないので、予測しようがないと思われがちですが、インテージでは過去データ、類似の過去データがいつでも見つかります。

商品マスタのような、データの根幹をなすようなデータベースというか、マスターデータを非常に豊富に持っています。国内で本当にナンバーワンだと思います。

全国小売店パネル調査「SRI」

出典:インテージ

全国85万人の人単位のテレビ視聴データ「Media Gauge Dynamic Panel」

出典:インテージ

――AI、データサイエンスに関わる主力サービスは?

今回、四つご紹介します。

一つ目はパネルデータを用いたモデル開発(受託)です。いわゆる小売店のPOSデータもそうですし、消費者5万人に対してバーコードスキャナを配布して、ずっと購買ログを取り続けたりしています。

二つ目は全国小売店パネル調査「SRI」です。

三つ目は全国85万人の人単位のテレビ視聴データ「Media Gauge Dynamic Panel」です。

そして四つ目が「パッケージデザインAI最適化サービス」です。

パッケージデザインAI最適化サービス

出典:インテージ

――今回、最もアピールしたいサービスは?

「パッケージデザインAI最適化サービス」です。ドコモ・インサイトマーケティングと共同開発してトライアル提供しているもので、お客さまから非常に引き合いが多いサービスです。

これは非常に秀逸でして、技術的には遺伝的アルゴリズムをさらに応用したような対話型のアルゴリズムを取り入れつつ、お客さま課題、ニーズにばっちりヒットしたサービスです。

マクロ経済トレンドとしての人材不足や、業界トレンドで言うと、調査費用は少し縮小傾向にあります。

その中で、インテージの業界ナンバーワンが長らく続いていますが、企業姿勢としては、1位だからこそ、新しいことにチャレンジしていこうということです。

アンケートのような定量調査やインタビューといった定性調査だけでは、もう生き残れないと会長自らが述べています。

生き残るためには調査をもっとアップデートしたり、従来の調査のやり方にとらわれない新しい技術を使ったサービスをどんどん出していこうということです。この典型例が「パッケージデザインAI最適化サービス」です。

購買・消費動向に高い関心ー自社メディア「知るGallery」


出典:インテージ

――オウンドメディア「知るGallery」のコンセプトは?

生活者のいま、マーケティングの明日が見えるサイト」というコンセプトです。さまざまなテーマについて生活者に対して行った自主調査や、自社データの分析結果をご紹介したり、データサイエンスはじめマーケティングリサーチ領域のエキスパートや海外駐在リサーチャーによるコラムなどを発信しています。

最近ですと、やはり読者が一番関心を持っているのは新型コロナウイルス関連です。コロナ禍で消費者の購買動向や消費動向、生活態度の変化に対する関心が非常に高いので、特に重点的にレポートを発信しています。

――ご自身のお立場は?

インテージとインテージグループ全体のデータサイエンスに関する取り組み、AIに関する取り組みはおおむねキャッチしている立場にあります。

所属している先端技術部は約30名の規模です。その多くが、データサイエンティストという肩書きです。この部の活動内容は大きく二つに分かれており、一つはデータサイエンス事業の推進です。

――インテージの業績と業界ランキングは?

業績も堅実でして、グループ連結売上は26期連続増収です。マーケティングリサーチ業界のランキングは国内1位、世界10位です。

――市場調査で用いる分析方法は?

調査会社の歴史上、統計学、統計科学をフル活用する統計的モデリングが多いです。

 

佐藤健一(さとう けんいち)氏

株式会社インテージ

開発本部先端技術部

副部長

 

  • 早稲田大学大学院理工学研究科修了後、アップルジャパン、ニールセンカンパニー、博報堂を経て現職
  • 現在、データサイエンス関連技術を利活用した研究開発業務に従事する傍ら、データサイエンティストの採用・育成も担う

 

(totalcount 2,338 回, dailycount 2回 , overallcount 16,613,735 回)

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