2020/08/04

【独占】AI人材採用など「攻め」の姿勢、地方創生寄与-新潟人工知能研の黒田代表

インタビュー

ライター:

新潟地域の生産性向上や地域創生に寄与するため、人工知能(AI)技術を駆使してビッグデータの解析やデータ・サイエンティストの育成に注力している企業がある。AIの研究や人材育成を手掛ける新潟人工知能研究所(NAIL)だ。

 

事業創造大学院大学副学長・教授で、NAIL代表の黒田達也氏はこのほど、AVILEN AI Trendのインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全国的なリモートワークの広がりなどがNAILにとって追い風になり得るとして、AI人材の新規採用を含め、事業拡大に向けて「攻め」の姿勢で臨む考えを明らかにした。

知事のリーダーシップが顕在化-コロナ禍で

黒田氏の発言は次の通り。

新型コロナウイルス感染症に関連して、二つあります。一つは、知事がリーダーシップをとって政策決定するということが、かなり顕在化してきたということです。ようやく地方創生の自覚が芽生えてきたという感じがしています。

もう一つは、「暗黙知の価値」ということです。どうしても、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションができない環境に強制的になりましたので、こういうリモートでのコミュニケーションで、ある程度意思決定しなければならないところに追い込まれたために、一定のフェイス・トゥ・フェイスと、コモン(共通)なインフォメーションとの間の、中間価値のような物事の情報の価値のフェーズができています。

「アフターコロナ」にチャンス-「リモート」広がれば

そこで「じゃあこのへんまではリモートでいいじゃないか」というのが広がってくれば、本当の意味で、地方からでもビジネスでセンシティブなコミュニケーションができるような時代になると思います。

この二つの点から、アフターコロナのほうがチャンスがあるのではないかと思っています。

7月から「攻めにいく」

DX(デジタルトランスフォーメーション)に対するディマンドは現状、東京中心ですが、これから地方でも強くなると思うので、そうすると人材不足が起こって、ますます、新潟人工知能研究所はフィールドを広げられるのではないかと思っています。7月からは攻めにいこうかと思っております(笑)。

まずは、コロナ禍の影響で資金調達が止まってしまっているAIベンチャーなどがあるようです。そのためこの業界でも人材が流動化しており、最近はトレンドとして「別にリモートだったらどこでもいい」という自由度を求めている若い人たちもいますので、そういう人を積極的に採用していこうと思っています。

今、駅に直結しているビルにオフィスがあるのですが、秋口にはオフィスを移転拡張して、人材を受け入れる準備をしています。

新潟人工知能研究所が入る駅ビル

――新潟人工知能研究所を設立した経緯は?

これからAIがさまざまなビジネスや日常生活に浸透していくに当たり、AI人材が東京に一極集中していることが、ますます地域間の経済格差を生むのではないかという問題意識からです。

もともとAIがやりたくてビジネスをやったというよりは、事業創造大学院大学の副学長という立場もあり、地方の優秀で若い人材が東京へどんどん流出してしまうと、仕事もどんどんなくなって、さらに東京への人材流出に歯止めがかからなくなってしまいます。現状、実際に、歯止めがかかっていません。そうした危機感から3年前に当社を設立いたしました。

 

また、仕事の関係で大昔に学部を卒業した東大と接点を持つようになり、東大のデータサイエンスを扱う学科、これからやっぱりAIのキーになるなって感じたこともあります。

そこで、データの解析を通じより効果的な地方創生、地域振興策などを提言することへの興味から、松尾豊教授などがいらっしゃる東京大学工学系研究科技術経営戦略学専攻(TMI)の博士課程に入りました。5年前から坂田一郎教授の研究室に在籍し、主にビッグデータ解析による地方の活性化のための企業間ネットワークを研究しました。

「まち・ひと・しごと創生会議」の有識者-NSGグループ会長

当大学のオーナーであるNSGグループの池田弘会長は、政府の「まち・ひと・しごと創生会議」の有識者議員として地方創生に尽力されていたので、私もブレーンとしてサポートしてまいりました。

日本ディープラーニング協会(JDLA)のG検定、E資格の受験者、合格者を見ても明らかなのですが、AI人材は圧倒的に東京が中心です。例えばE資格合格者数で見ると、東京の700名以上に対し、新潟はまだ数人という状況で、地域格差がますます広がってしまいます。

そこで、まず初めにNSGグループのコンピューター専門学校に、AIコースをつくって人材を育成しようということになりました。2年前のことです。TMIの関係者などに協力していただいて、まず教員のAI教育を始めて、それで2019年からAIコースをつくって、人材育成を始めたのですが、なにぶん、まだ新潟ではAIの需要が顕在化していなくて、皆さん興味はお持ちで話は聞いてもらえるのですが、全然ビジネスにならないのです。

そういう状況なので、まず、人材教育でビジネス展開していくしかないということで、G検定にあわせてG検定対策講座をやったり、いろいろなところで講演したり、スタッフがAI学習のレクチャーをしたりしています。

また厚生労働省の補助金をいただいて教育プログラムを作ったりしています。もともと教育グループなので、教育分野を中心に、民需というよりは半官半民のようなところで、なんとかビジネスをして食べさせてもらっているというのが現状です。

厚労省教育訓練プログラム開発事業「AI講座」

優秀な若手人材多い-新潟

――NAILの強みは?

強みの一つ目は、新潟にはまじめで優秀な人材がいることです。新潟県は、古い意味でのSE人材をけっこう輩出しているのです。優秀な若い人を育てやすい環境ではありますので、新潟駅の周辺にICT関係のベンチャーもいくつか立地しています。

新潟県は人口が多いということもあり、比較的真面目で優秀な人材が、新潟には多く育ちやすい環境があるのです。ただ、残念ながら、卒業すると東京へ行ってしまうのです。

そこで、NSGグループとして、AI教育に関して、専門学校だけでなくて、2020年4月から、NSGグループに開志専門職大学という新しいカテゴリーの大学を設立し、実質AI人材を育成するための情報学部を新設しました。私は同大学の開設準備委員をしていました。さらには新潟大学の学生などもインターンとして受け入れて、AI人材の育成に努めています。

このように、新潟人工知能研究所は、東京の同業者と違い言葉を選ばないで言うとコストの割に優秀な人材をホールドすることができます。いくつかデータの面倒くさい前処理などの仕事を東京からいただいたりして、売り上げを上げているのも事実です。

一方で、教育や医療系のベンチャー2社とアライアンスを組んでおり、高度なデータ処理に関してはアドバイスをいただきながら、開発系業務もこなしていこうとしています。

膨大なデータの保有が強み

強みの二つ目は、教育のグループであるNSGグループには、教育に関するビッグデータがあり、また医療介護の分野でも、病院や特別養護老人ホーム、デイケアセンターなどの関係施設だけで200以上ありますので、医療介護のビッグデータも手に入りやすいということです。まだまだ、データがきれいに正規化されていないので、ちょっと手間はかかりますが。

AIによるデータ処理自体は、最先端の研究分野は別にして、ほとんどアルゴリズムが公開され、定型化しつつあるので、質の高いローデータがどれだけ整理されているかということが、結局はモデルの精緻に関わると思います。

繰り返すと、これから重要な分野である教育と医療介護の分野に関して、身近にデータがあって、それによってプロダクトをつくりやすいということです。

これらの二つが大きな差別化要因です。これから、こうした優位性を活かして新たなプロダクトをつくっていく予定です。

地方が政策決定できる制度を

――人材の東京一極集中の是正策は?

政府の政策決定プロセスのところが、デジタル化してオープンにならないといけないと思います。もっと言うなら、地方分権がきちんと進んで、県単位、あるいは道州制ぐらいのところで政策決定を行えたりする制度がないと、なかなか難しいのかなと思います。

米国などを見ていると、やはりそう思います。州がある程度政策権限を持っています。また、シリコンバレーのように、優秀な大学が地方に分散しているということもあります。昨年、中国・深センに行きましたが、かえって北京から遠いほうが自由な活動ができて、フリーな労働力も集まりやすいということもあります。

規制が緩和され、優秀な人材がいて、ある程度の政策決定がその地域でできる環境が整えば、別に日本だけ特別というわけではないので。ただ、日本の場合は、明治以来、中央集権的なので、なかなかそういうふうにはなっていかないんですね。

黒田達也(くろだ たつや)

株式会社新潟人工知能研究所
代表取締役

  • リクルート、エイチ・アイ・エスでベンチャー企業経営を経験
  • 松下政経塾、日本経済団体連合会、日本ニュービジネス協議会連合会で政官民のネットワークを広げる
  • 東京大学工学系研究科技術戦略学専攻の坂田一郎教授の下、ネットワーク分析やAI、ビッグデータ解析の研究に従事
  • 事業創造大学院大学副学長・教授

 

(totalcount 521 回, dailycount 3回 , overallcount 2,887,380 回)

ライター:

インタビュー

COMMENT

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
*は必須項目です。




CAPTCHA