2020/04/24

2020/07/18

【独占】日本初「データサイエンス学部」創設の滋賀大・須江副学長インタビュー

インタビュー

ライター:

 滋賀大の須江雅彦理事・副学長(社会連携・データサイエンス教育研究担当)はAVILEN AI Trendの独占インタビューで、日本初のデータサイエンス学部創設について「データサイエンスの基盤となるのは情報学、統計学の2つ柱ですが、日本ではICT(情報通信技術)の進展でビッグデータが出現してもなお統計科学を体系的に学ぶ専門学部がなく高等教育機関の大きな欠陥になっていました」などと話した。

 「21世紀で最もセクシーな職業」――。トーマス・ダベンポート米バブソン大教授が米ビジネス誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」(2012年10月号)でこう表現して以来、世界的にも、さまざまな業界でデータサイエンティストと彼らが開発構築する人工知能(AI)へのニーズは高まるばかり。

 「AVILEN  AI Trend」のローンチに当たり、2017年に日本で初めてデータサイエンス学部、19年には大学院データサイエンス研究科をそれぞれ創設した滋賀大学に迫る。

これまで日本の大学は統計学を体系的に教えてこなかった

 滋賀大の須江雅彦理事・副学長(社会連携・データサイエンス教育研究担当)はこのほど、AVILEN AI Trendの単独インタビューに応じた。須江氏は日本初のデータサイエンス学部創設について「データサイエンスの基盤となるのは情報学、統計学の2つ柱ですが、日本ではICT(情報通信技術)の進展でビッグデータが出現してもなお統計科学を体系的に学ぶ専門学部がなく高等教育機関の大きな欠陥になっていました」と話す。

出典:参考図1. IT 人材の需給に関する推計結果の概要 (経済産業省)

 

 その上で「テクノロジーを理解し、データから価値を導き出すというプロセスを設定できる人たちが必要ですが、国内で、そのためのデータサイエンティストが全然足りていませんでした。そこで、高等教育機関として初めて、本格的なプログラムを組んで正面から教育を始めたのです」と明かす。

 

日本が勝つのはなかなか困難ーGAFA念頭に

 須江氏はグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの4社の「GAFA」と呼ばれる米IT大手プラットフォーマーを念頭に、日本の人材育成は20年ぐらい遅れています。プラットフォーマーが大きく先取りしている中で、これに勝つのはなかなか難しいですが、日本人の能力の問題ではないので、人材をきちんとたくさんつくって、データを高度利用したビジネスの最適化や新しいビジネスを構築・展開していけば、日本の生きる道はまだまだあります」と話し、日本にはまだチャンスがあるとの認識を示す。

 須江氏は内閣府大臣官房参事官、総務省大臣官房審議官、財務省大臣官房審議官、総務省統計局長、総務省統計研修所長や統計情報戦略推進官などを歴任。2016年4月から滋賀大の理事・副学長として、17年のデータサイエンス学部、19年の大学院データサイエンス研究科それぞれの創設に尽力。滋賀大は20年4月、大学院データサイエンス研究科博士後期課程も開設する。

「AIをツールとしてどう使うか」が大事

 須江氏は、データサイエンスとAIのあるべき姿について、「『データサイエンスをどうやって適用し使うのか』『AIをツールとしてどう実装し使いこなしていくか』ということが一番大事です。例えば入国管理などセキュリティー管理のさまざまな場面でAIによる画像判定が取り入れられていますが、多量の画像データをAIに処理させフラグを立てて、必要なところだけ人間がきちんとチェックすればいいということです」と言及。「AIは多量のデータをリアルに処理できるので、(人間にとって)現実社会を運営していく上ですごく使い勝手の良いツールです。マーケテイングなどさほどの精度が必要ない場面では、施策の自動展開も可能です。つまり、AIを使い効率化を図れるところにはどんどん普及していくと思います」と語る。

AIに診断されるよりも、お医者さんに言われる方が納得できる

 そして須江氏は医療現場を例示する。「例えば、AIに診断結果を告げられるよりも、お医者さんに言われる方が納得できる、という人間心理もありますので、(AIの活用方法を)うまく切り分けていくということが大切です。AIの全部が良い、悪い、というのではなくて、AIをどこまで使って効率化を図り、ここから先は人間がやった方がよい、というように、最適なすみ分けをしていくということになると思います」――。

 

 須江氏はこう語り、AIはデータ処理やフラグ立てなどを担い、人間が最終的な判断を行うというように、役割分担することが有意義だとの認識を示す。

 

 須江氏は、滋賀大データサイエンス学部や大学院データサイエンス研究科の学生の進路について、「マーケテイングや公的サービスを改善したいという人もいるでしょうし、製薬・創薬関係に進みたいと考える人たちもいるでしょう。鉄道あるいは自動車関係に進みたいとか、船(海運)をやりたいとか、どのビジネスでも先端的な分野では今や多量のデータを使ってビジネス構築や事業展開をしているので、進む分野はいくらでもあります」と指摘する。


 その上で、「デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むような企業であれば、どこでも就職対象になると思います。またいずれ自らビジネスを立ち上げる人たちも出てくることでしょう」と話す。

 

若者がデータサイエンス分野で活躍できれば、日本は十分稼げるー小中高生にエール

 さらに須江氏は現代の小中高校生に関して、「若い人たちは、デジタル・ネイティブ世代で、小さい時からPCなどに触れ、その操作とともにデータを扱うとか、プログラミングをすることに慣れ親しんだ人たちがだんだん成長してくるという意味では、だいぶ前に社会人になった人たちが学び直すよりは、はるかに親和性があります。物事をデータから見て、客観的に評価し世の中仕組みを変えたいと考える癖が付いてくるように、うまく育ってほしいな、と思います」とコメント。

 

 「若い人たちの力はすごく大事です。デジタル・ネイティブ世代のそういう若い人たちがデータサイエンスの分野で活躍するこれからの社会では、AIなども当然使いこなしていくでしょうし、日本の未来は明るいし経済的にも十分稼げると思っています」とエールを送る。

 

経営者の理解「必ずしも深くない」―データサイエンス

 このほか、須江氏は、日本企業の経営層に関して、「いわゆる文系出身の経営者が多く、データサイエンスの役割、可能性についての理解は、必ずしも十分とは言えません。企業側から『経営者に説明してほしい』という要望が多く本学に寄せられています。このため、企業経営の幹部に対して、データサイエンスの重要性や役割、データサイエンティストがどのようなことをできるのかという話をして回っています」と紹介。一方、「意識の高い企業も多く、この分野で大学との連携やオープンイノベーションの重要性を理解していただき、学部設置からわずか3年ですがさまざまな業種との企業連携も加速しており、共同研究だけでも100以上の企業と行っています」と話す。

 

統計学・情報学を駆使して「価値創造」できる人材を育成

 滋賀大は、日本で極度に不足しているデータサイエンティストの育成を目的に、17年に日本初となるデータサイエンス学部を創設。滋賀大が定義するデータサイエンティストとは、「統計学」と「情報学」を駆使し、社会の多様なデータから「価値創造」をできる人材だ。

 

 滋賀大は情報、統計、応用分野を柱に「文理融合型」の人材を育成するための本格的なカリキュラムを用意。学部生は4年間を通じて連携先企業から提供される実データを基に実践的なデータ演習の授業を行う。特に3、4年時には企業との共同プロジェクトなどにも参加し問題解決に向けて、実践的な能力を磨く。

 出典:滋賀大学

 

三井住友FGはじめ多様な業種の企業と連携ー滋賀大データサイエンス教育研究センター

 また、滋賀大がデータサイエンス学部開設の前年16年に創設した「データサイエンス教育研究センター」は、日本のデータサイエンス教育研究拠点としての役割を担う。国立研究開発法人理化学研究所「革新知能統合研究センター」、大学共同利用機関情報システム研究機構「統計数理研究所」、総務省統計研究研修所や独立行政法人統計センターなどの研究機関、三井住友ファイナンシャルグループをはじめ、さまざまな業界・分野の数多くの企業などと連携し、新たな価値創造に向けた取り組みを続けている。

 

 須江氏は、「データサイエンス教育研究センター」の設立について、「大学でデータサイエンスを教育する時に、一番の課題は、現実社会のデータが大学にないということです。つまり、データは企業や自治体などにあるのです」と指摘。このため「データサイエンス教育研究センターをつくって、企業などとの連携を進めていったのです。それは、実データに基づいた実践的な教育訓練をするためには不可欠の施策です」と明かした。

AVILEN・崔一鳴(写真左)と須江氏(写真右)

(totalcount 1,355 回, dailycount 7回 , overallcount 3,561,537 回)

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