2020/07/30

2020/07/29

【独占】ストックマーク林達社長「3年後に企業価値1000億円目指す」ー経営支援AI

インタビュー

ライター:

自然言語処理技術を駆使した独自開発の人工知能(AI)サービスで、三菱UFJ銀行やソフトバンク、LIXIL、経済産業省など1500社を超える企業・機関の経営・事業を支援している企業がある。東大発AIベンチャーのストックマークだ。

 

ストックマークの林達社長はこのほど、AVILEN AI Trendの独占インタビューに応じ、向こう3年間で売上高100億円規模、企業価値評価(バリュエーション)1000億円規模を目指す考えを明らかにした。IPO(新規株式公開)の時期は「3~4年後ぐらい」と語った。

林社長はその上で、主力である「Astrategy」、「Anews」、「Asales」の3サービスを解説するとともに、開発秘話や経営者としての苦労などについて話した。

Astrategy

――主力は?

Astrategy、Anews、Asalesという三つサービスを持っています。

一つ目がAstrategyというサービスです。世界中のニュースデータを解析して、例えば事業会社の経営企画や新規事業の部門が、どうやって新しいビジネスを生み出すべきか、どんなテクノロジーを使ったほうがいいか、そのマーケットにはどんな競合がいるか、というようなところを、瞬時にあぶり出すマーケット分析ツールです。

今までは膨大な情報の中から、どんな競合がいるのか、どんな事例があるのか、ということを一つ一つ発見しなけれなりませんでした。人間には分析力の差があったり、人間は全部網羅的にデータを見るわけではないので、洩れが出てしまうことがあります。

Astrategyは一瞬で情報分析してしまうので、筋の良い仮説が導き出せますので、新規事業の成功の確度を上げていくために使っていただいています。大手の通信会社にも使っていただいています。

組織をイノベーティブに、かつ活性化するために、外部情報に目を向けさせて、世の中にどんなニュースが出ているのか、競合はどんな動きしているのか、どんな新しいテクノロジーが出ているのか、ということを全社員が感度高くニュースを見ていくことで、情報感度を上げていくことが求められます。

Anews


 

二つ目がAnewsというサービスです。社内版SNSのようなイメージでコメントを付けることで、「隣の部署の人が何をやっているか分からなかったが、こういうことに興味を持っているのか」ということを、瞬時にあぶり出すとかということで、人と人とつながり。コンテンツとコンテンツのつながりというような、社内のネットワークを作っていくというところを、Anewsでやっています。

Asales


三つ目がAsalesというサービスです。簡単に言うと、文書検索システムです。営業担当者が一番大変な提案資料を作るところをサポートするものです。提案資料は過去に同じような提案資料があるので、一から作ることってほとんどないと思うのです。データが共有されていなかったり、そもそも検索できないということで、そこを、われわれのスライドファインダーというクラウドのサービスに全営業資料をアップロードしてもらうと、ぱっと簡単にスライドを全文検索で探せて、AIが各ページごとに自動分類してくれるので、こんな意味のページないの?というところも、さっと導き出してくれるというものです。

さらに、Asalesは「いや、あなたこういうお客さんなんだったら、こんな資料とか、こんな商材を持っていったほうがいいですよ」ということをどんどん自動的にレコメンドしてくれるので、自分が気付かなかったような新しい販売手法を見つけ出すことをやってくれるというイメージです。

Asalesは、例えばスライドを検索する時に、「画像検索×自然言語検索」というような、二つを掛け合わせた検索ができるようになっています。

公開AIプラットフォーム活用してファインチューニング

――三つのAIサービスは独自開発ですか?

もちろんです。ただ、当然、今、機械学習のモデルは基本、公開されているので、そこを使って、それをわれわれの学習データに当てはめて、そこでファインチューニングしていくということです。

もはや機械学習の世界において、独自エンジンで持っていますっていうのが、言葉として正しいかはちょっと微妙かなと。

機械学習の部分はPythonを使っています。

Anewsで、毎日数十万記事、30万記事ぐらいを世界中からクローリングして、ビジネスニュースのデータベースを持っているので、もっと自然言語処理やろうとすると、ウィキペディアとか、外部とのコーパスを使って、一般的な用語のモデルを作るのですが、われわれは、よりビジネスに特化された言語モデルを作っているというところが、すごい強みになっているかなと。

毎日3万媒体、10万~30万記事をクローリング

――クローリング対象となる媒体と記事の数、言語は?

メディア数、日によるのですが、国内外で3万メディアぐらいです。日本語で1万メディアぐらい、英語で2万メディアぐらいをクローリングをしています。

記事数は1日少ない時も10万とかありますし、10万か30万とか、そのぐらいのレベル感です。

言語は日本語と英語の両方あります。

――ユーザーのニーズに応じて精度は向上?

そうですね。個別にカスタマイズしていくというよりは、汎用的なモデルを1個作って、それにユーザーの履歴が入ってくることで、自動的にアウトプットを機械学習は返してくれます。

そのモデルをいろいろチューニングしながら、汎用的なモデルを作っていくという、そんなイメージです。

2週間でプロトタイプ完成、2~3カ月でリリース

――Anewsの開発期間は?

Anewsは2017年の4月に正式リリースをしたのですが、2016年の末ぐらいに、実はとあるお客さんから「Anewsの原型となるようなサービスを一緒に作りたい」と言われたのです。その時に、われわれは実はAnewsのような法人向けのサービスは作っていなくて、もともとはB to C向けの情報管理アプリを作っていたのです。

その担当者の方と意気投合して、一緒に作りましょうということで、その日から一気に2週間でプロトタイプを作って、そこから2~3カ月ぐらいでプロダクトを作ってリリースしたという、かなりクイックにやたというところが大きいかなと思います。

提供先は金融、商社、メーカーなど幅広く

――提供先は?

国内で言うと、大手企業が多いです。メガバンクなどの金融機関、商社、生保、損保、IT、メーカーといった幅広く大手企業に導入いただいているというところが特徴です。

――Anewsは、提供先の業種やニーズに応じて、レコメンドするニュースは異なるのですか?

そうです。そこは機械学習が自動的に学習をしてくれて、どんな記事を読んでいるとか、どんな記事をコメントしている、どんな記事を、まあまあとか、いいねしているねという、閲覧行動から、次の日は、あなたのその行動に合わせて、ニュースを配信してくれると、そんな機能になっています。

各個人の業務に合ったニュース配信ーSmartNewsとの違い

――SmartNewsとの違いは?

大きく3点ぐらい違います。一つ目は、個人向けか、法人向けかということことが大きな違いです。

二つ目は、ニュースをレコメンドするという意味で、SmartNewsは、各個人にパーソナライズされるというよりも、世の中の人たちがどんなものに興味を持っているかという、いわゆる集合知的な、世の中での人気ランキングというところを中心に出してくるものです。

一方、Anewsは、各個人の行動に合わせて、業務ミッションに合わせたニュースを配信するというものです。

パーソナライズか、みんなの人気ランキングかというところが、大きな違いです。

三つ目は、Anewsはニュースの配信も当然やっているのですが、そこが主目的ではなくて、あくまでもニュースは、社内のコミュニケーションを活性化させるための一つのコンテンツです。コメントを付けて発信していくというような新しいコミュニケーションスタイルを生み出していくというところにフォーカスをしています。

このように、大きく三つが違いだと思っています。

AI解析結果の精度測りづらい

――Anews開発の苦労は?

やはりAIを使ったプロダクトの中で一番難しいのは、AIが出してきた情報の評価というところですね。ニュースをレコメンドしたけれども、そのレコメンドの精度って、定量的に表したら、どのぐらいなのかは、実はなかなか測りづらいのです。

だからこそ、例えば、きょうはその人の時系列変換というような、ユーザーのデータをしっかりとつぶさに観察しています。アクセスしているのだけれども、どのぐらいの記事に「いいね」をしているか、記事はたくさん見ているんだけれども、あまり「いいね」しなかったら、あまりいい記事が上に上がっていなかったのかなと。

そういうユーザーを基に、AIのアルゴリズムをチューニングして、できる限り最短で、ユーザーがほしい情報にたどり着けるようにするというところに、日々苦心しているというところが大きいかなと思っています。

優秀人材採用・認知度向上へ尽力中

――経営者としての苦労は?

全部大変なのですけれど、あまり大変だと思ったことないって言ったらあれなのですが(笑)。

やはり組織づくり、しっかり運営していくための人のところですね。優秀な人材を採用していくというところは、常にスタートアップの宿命でもあるので、そこが一番大変です。

もう一つが、スタートアップとしては当然、認知度ですね。もっといろいろな人に知ってもらいたいというところは、苦労としては大きいです。

――総従業員数は?

60名弱ぐらいですね。

――開発メンバーは?

Anewsの開発メンバーは総勢7人ぐらいっていう感じです。Astrategyはだいたい3~4人ぐらい。Asalesは6~7人ぐらいっていう、そんなイメージです。

3年後にバリュエーション1000億円ぐらいに

――業績目標を含む事業戦略は?

今から3年後ぐらいには、企業全体のバリエーションというか、企業価値としてはユニコーンぐらい、1000億円ぐらいまで持っていきたいと思っているので、そこを目指して今、この3サービスで、それぞれ売り上げを伸ばしていって、着実に成長させていきたいなと思っています。

その後、当然グローバル展開とかも考えているのですが、まずは、国内で100億円規模ぐらいの売り上げを作っていくというところを目指しているというイメージです。

――当然、IPO(新規株式公開)を視野に入れていると?

そうですね。もちろんです。

3~4年後ぐらいにIPO

――IPOの時期は?

そこはこれからですね。3~4年後ぐらいかなと思っていますが。

――単月黒字化は?

まだまだ売り上げとしては追い付いていないのですが、そこを目指したいということを、確固たる思いとしては持っているという感じです。

――資金調達は?

資金調達は、今年初めに1回資金調達をしています。

――今後、何回か資金調達していくと?

もちろんです。

林 達(はやし たつ)氏

ストックマーク株式会社

代表取締役 CEO

  • 東京大学文学部宗教学科卒業
  • 伊藤忠商事にて投資戦略策定及び事業投資、事業会社管理業務に従事
  • 台湾出身で貿易業を営む両親の下に生まれ、幼少期を台湾、日本の往復で過ごす
  • 学生時代には、東京大学・北京大学・ソウル大学の学生交流ネットワークにて、300名規模のフォーラムを主催
  • 東アジアの富裕層向けインバウンドサービスを提供するスタートアップを設立、大手旅行代理店との提携、行政との共同事業を成功させる
  • 2016年、ストックマークをスタートさせ、AI✕テキストマイニングを強みとするSaaSであるAnews、Astrategy、Asalesを開発・運営中
  • AIによって日本企業のビジネス・プロセスを再定義し、グローバルでの競争力を高めるべく奔走中。

 

(totalcount 6,205 回, dailycount 18回 , overallcount 16,613,735 回)

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