2020/04/27
2021/10/05
【独占】「モノづくり」で日本にもチャンスあり!日本ディープラーニング協会理事・岡田事務局長
日本ディープラーニング協会(JDLA)理事の岡田隆太朗事務局長はンタビューで、米国のGAFAなどがAIのビジネス活用で先行しているとしながらも、日本には「モノづくりにチャンスがある」と語った。その上で「文系理系問わず、まず全国民にG検定を取ってほしいと考えています。そして、AIエンジニアでのキャリアを考えている方は全員E資格も取ってほしいですね」と話した。
目次
ディープラーニング(深層学習)ー第3次AIブームの原動力
ディープラーニングを世に知らしめた「カナディアン・マフィア」
近年、人工知能(AI)に向けられる視線は熱い。現在の「第3次AIブーム」の原動力となっているのが、機械学習(マシンラーニング)の一つの手法である「ディープラーニング(深層学習)」。
10年前にはほとんど知られていなかったディープラーニングを世界に知らしめたのが、米グーグルにも所属するカナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン名誉教授、米フェイスブックのチーフAIサイエンティストでニューヨーク大学のヤン・ルカン教授、モントリオール大学のヨシュア・ベンジオ教授。3人はAIにおける「カナディアン・マフィア」の異名を取り、2018年にはコンピューター界のノーベル賞と称される「チューリング賞」を受賞した。
ディープラーニング技術の普及・活用で産業力向上目指す
ディープラーニング技術の普及・活用などを通じて産業力の向上を目指しているのが日本ディープラーニング協会(JDLA)。AVILEN AI Trendの創刊にあたり、AIとそれを支えるディープラーニング技術などについて、JDLA理事の岡田隆太朗事務局長に聞いた。
北米が首位、次に中国ー日本に期待
「北米の『カナディアン・マフィア』と言われるベンジオ教授、ヒントン教授、ルカン教授がムーブメントを起こしたことでも分かるように、学問として論文数が多いことからも、やはり北米が進んでいます。次に中国が来ているのも事実です。日本は全然、遅れてしまっています」「(ビッグデータを扱う)米GAFAや中国BATHも頑張っています」ーー。
岡田氏は、ディープラーニング技術のAIビジネスへの活用という観点で、米国のグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、中国の百度(バイドゥ)、アリババ集団、騰訊控股(テンセント)、華為技術(ファーウェイ)といった巨大ITプラットフォーマーが先行している現状をこう解説。日本企業のAI活用の進展に期待を示す。
「AI2000 最も影響力ある研究者」に掲載された日本人
中国の清華大学は学術論文検索サービス「AMiner」で、「AI2000 最も影響力のある研究者」を公開。JDLA理事長の松尾豊東京大学大学院工学系研究科教授はそのうちの一人でもある。Business Insider Japan(ビジネスインサイダージャパン)は「日本にゆかりがあると思われる名前の研究者は少なくとも10人いる。とはいえ、『日本のプレゼンスが低い』という大勢に変化はない」と報じている。
一方、AI・機械学習の活用をめぐり、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2019年7月に発表した産業分野でのAI・機械学習の活用状況などに関する調査報告書で、「日本においてもさまざまな企業がAIの活用に取り組んでいるが、米国および中国と比較すると日本は遅れをとっている状況」と指摘する。
AI活用を進めている日本国内の企業は、うまく活用できている企業と、そうでない企業に2極化しており、うまく活用できていない企業は「AI人材やAIに対する知識・スキルが不足していることが要因と考えられ、AI人材の育成を図っていくことで底上げが可能」だとNEDOはコメントしている。
モノづくりに好機もー日本なりの活用の仕方ある
岡田氏は「自動車のエンジンも、日本人が初めに考えたわけではないですが、トヨタやホンダ、日産自動車が汎用目的型技術をうまく使ったわけです」とも話し、かつて日本の自動車メーカーが海外の開発技術を活用・応用して大きな成果を挙げたと指摘する。
「日本は『米国に勝とう』というよりも、日本なりの活用の仕方があると思います。モノづくりにチャンスがあるのではないでしょうか。日本から、新しいユニコーン(企業価値10億ドル超の未上場企業)が出てくればいいですね」と話し、日本勢の今後の躍進に期待を示した。
「活用促進」「人材育成」「社会提言」など5つの活動を推進
2017年6月に設立したJDLAは、ディープラーニング技術を事業の柱に据える団体や企業や有識者らが中心となり、主に「活用促進」「人材育成」「社会提言」「国際連携」「理解促進」という5つの活動を推し進める一般財団法人。特に注力するのが活動が「人材育成」だ。
JDLAは「人材育成」の一環として、①ディープラーニングの基礎知識を持ち適切な活用方針に基づいて事業に活用できる人材(ジェネラリスト)と認定する「G検定」、②ディープラーニングの理論を理解し適切な手法で実装する能力や知識を備える人材(エンジニア)と認める「E資格」ーーという2つの資格試験を実施している。
累計合格者数2万人突破ーG検定・E資格
17年に始まったG検定試験、18年にスタートしたE資格試験を合わせた累計合格者数は2万381人(G検定1万8721人、E資格1660人)に上り、協会設立から3年目で2万人を超えるディープラーニング活用・実装人材の輩出に成功している。国内でAIに関連するキャリア形成の機運が高まっていることがうかがえる。
出典:JDLA
全国民に「G検定」取ってほしいーAIエンジニアなら全員「E資格」取得を
岡田氏は「日本ではビジネスマンを文系、理系というふうに分けて言うことがありますが、文系理系問わず、まず全国民にG検定を取ってほしいと考えています。そして、AIエンジニアでのキャリアを考えている方は全員E資格も取ってほしいですね」と話し、文系・理系の垣根を越えて、ディープラーニング技術の普及を目指す考えを示す。
JDLA理事長の松尾豊東大大学院教授もJDLAの公式ウェブサイトで、ディープラーニング産業の早期拡大に向けて「まず重要なのは人材育成です。ディープラーニング技術を担う人材、また、ディープラーニングの可能性と限界を正しく理解し、うまく事業に活用する人材の両方が必要です」と唱えている。
今後のAI技術活用の趨勢に注目
「まだ社会が温まっておらず、人材が育っていないので、活用促進と人材育成の両方をしっかりやっていかなければなりません」ーー。岡田氏はこう語り、活用促進と人材育成を車の両輪として進めることが重要だと指摘。併せて、情報発信などを通じた「理解促進」、公的機関や産業界への「社会提言」、法令などに関する「国際連携」も加速することに意欲を示した。
「先行する米中の巨大ITプラットフォーマー VS 遅れを取る日本勢」と映るこの状況に果たして変化は生じるのかーー。あらゆる業界で今後のAI技術活用の趨勢が注目される。
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