2020/09/10

【独占】ドローン・AIで風車を点検・補修、予防保全メンテナンス促進-アルビト鈴木代表

インタビュー

ライター:

 

ドローンと人工知能(AI)を活用し、国内の風力発電事業社向けに「風力発電ブレード点検~補修パッケージサービス」を提供している企業がある。画像解析AI(人工知能)やデータ分析を手掛けるアルビトだ。

 

アルビトは、①ドローンによるブレード(羽根)点検、②取得画像解析とレポートの作成、③点検結果に基づくブレード補修--のワンストップのサービスを提供。点検作業時間半減とコスト4割減の実績を持つ。

数年以内にシェア拡大を目指す

アルビト代表取締役の鈴木勇祐氏はこのほど、AVILEN AI Trendの独占インタビューに応じ、提供する「風力発電ブレード点検~補修パッケージサービス」の特長について解説。「日本国内の陸上/洋上に設置される風車に対して、積極的なアプローチを行い、予防保全メンテナンスを浸透させたい」と語り、シェア拡大に強い意欲を示した。

補修までのパッケージ提供と循環型サービスの仕組み

ベトナム進出にらむ

アルビトは海外進出の第一弾としてベトナムへの進出もにらみ、今年7月に調査会社Buddy-K Vietnam社と業務提携してリサーチを開始した。360キロの海岸線を持つベトナムは2012年ごろから風力発電の導入をスタート。稼働中の風力発電所は5カ所以上あり、2020年までに約50カ所の風力発電所が建設見込みだという。

鈴木氏の発言は次の通り。

――主力サービスは?

われわれの取り組みは、インフラ設備向けに点検から補修、さらにその後の経過観察、アセスメントをトータルで提供するというものです。

インフラ点検の損傷解析に専門家の知見とAIを活用しており、風力発電設備向けにサービスを提供しています。既存の点検は、地上からの目視点検やゴンドラ、ロープでの作業ののち、結果を事業者が確認し、補修が必要かどうかを判断して、補修業者が補修見積もりを行うというように、さまざまなプレーヤーが分かれて作業を行っているケースがあります。

われわれは、そこを一気通貫でご支援させていただき、効率化を図れる体制を組んでいます。点検から補修、さらに経過観察までを見越した上で、ドローンで必要な撮影を行います。撮った画像を補修につなげるために、ドローンでどのような撮り方が必要かを工夫したワンパッケージサービスです。

 

AIを用い専門家ノウハウをスコア化

 

台風がよく通過し、四季があるという日本の気候により、損傷パターンや損傷発生頻度が欧米に比較して多いという状況を踏まえると、予防保全の観点で、経過観察が行える仕組みが必要となっていきます。われわれの取り組みは、風車を停止させる時間を減らし、低コストで点検が行えるため、その点検結果を元に、実際にどこまでの補修をどのタイミングで行っていくのが事業者さまにとって適切なのか、経過観察をどのように行っていくかをご提案させていただいています。

われわれはAIを活用し、専門家のノウハウをスコア化することにより、属人化ではなく、きちんとした基準の下に判定し、設備の利用環境や経過観察を行う場合に、今どの程度の補修を行うのが望ましいのかという今までにないスタンダードを作っていこうという取り組みを行っています。

風力発電設備の停止時間を短縮

――類似サービスを提供している競合は?

多く存在していると思います。AIを活用して画像解析を行っている会社も多くあり、損傷を検知するサービスを提供されている事業者もいますが、実際にそのサービスを使って、対象設備に必要な補修はどれぐらいなのかという判定が行えるかというと、単純に画像解析のみをAIで行うだけでは実現が困難だと考えています。

アルビトの差別化要素は、補修に必要なデータの取り方です。膨大なデータをいくら取っても、必要な情報がその100分の1でしかないのであれば、うまく100分の1のデータを取ることです。これは事業者にとって、風力発電設備を停止する時間を減らすことに直結します。

例えば「キズらしきものがありますよ」という解析結果を出したとしても、損傷部分を「どのタイミングでどこまで直すのが望ましい」という判定まですぐには判断が難しいと捉えています。アルビトサービスは、ドローンで撮影する人間と、解析をする人間、補修する人間が一体になったものですので、差別化要素となります。

近年さまざまな企業が専門的な知見を活かしてサービス開発・提供を進められていますが、相乗効果を生むために積極的な協業先の開拓も進めています。

――サービス提供実績は?

本年度より本格的に営業活動を開始し、現在数社(数十基程度)に対してサービス提供させていただいています。新型コロナウイルスの感染拡大で実施延期となっている案件もございますが、陸上・洋上に限らず風力発電設備の点検サービスがスタートしました。

今年は風力発電設備向けにワンストップサービスを提供開始しましたが、並行して橋梁や送電線といった他の設備に対しての検証~サービス化を進めています。

――ドローンによる風車1基の撮影時間は?

1基当たり約2時間です。旧来の人手による画像取得方法の場合、例えばロープ点検では1基の点検に1日かかるのですが、ドローンを利用することにより1基あたり2~3時間でインプット画像が取得可能になるため、既存のやり方の3分の1程度の時間で作業ができます。

――撮影の体制は?

安全面に考慮して3名体制で行っています。ドローンを操縦する人、カメラで撮影する人、ドローンが対象設備に近づきすぎていないかを第三者目線で観測する人です。飛行の自動化が進むにつれて、柔軟に実施体制は組み替えていく予定です。

――撮影を早く終わらせられる秘訣は?

ドローンで撮影している会社も多くいらっしゃると思うのですが、われわれは、補修する観点であらかじめ「どこを重点的に撮る。どこはある程度流して撮っていい」というところを押さえて撮影ルートなどをマニュアル化しているので、効率的にできるというのが一つあります。

――サービスの特長は?

ドローンによる点検~損傷判定レポート作成~補修までをワンストップサービスとして提供しています。また、現在はこのサービスで、補修まで実施となった基に関する点検費用を無償化するキャンペーンを行っており、より事業者さまに予防保全の観点から定期的な点検を行っていただけると考えています。

ドローンやAIを活用し予防保全メンテナンス促進を目指す

――事業戦略・計画は?

このやり方で、まず点検から補修の実績を増やしていく計画を立てています。日本国内の陸上風車が2000基程度ありますが、延べ1000基をここ数年以内に撮影したいと考えています。

なぜ数を増やしたいかと言うと、日本では「どの地区のどのエリアで、どういう気象条件の下、どの程度期間が経過した場合はこういう損傷が発生/進行しやすい」というような情報を、うまく有効的な形で活用できていない状況だと捉えています。

われわれは、効率的に点検を行うことによって、設備停止時間を減らし、その点検の中で検知した損傷を早期に直していくというサイクルをご提案させていただくことで、事業者さまが点検を実施するハードルを極力低くしていきたいと考えています。そうすることで継続的に予防保全の観点で定期点検を実施し、より事業者さまの付加価値向上に寄与する形でパートナーシップを結んでいける関係になっていきたいと考えています。

AIがブレードの傷を判別-画像認識技術

――サービスに用いている画像処理技術は?

撮影データをシステムに登録する際のルールを工夫し、「どの風車のこの位置です」というように、大体の位置関係をシステムにデータ入力したタイミングで分かるようにしています。
そこから前処理を行った後、損傷を判別させるモデルを用いて判定し、結果をレポート形式で出力するということをシステム化しています。

AIはすぐには完璧にはなりません。100%の精度にはならないという前提の下、実際の補修などにつなげるため、システムが出したレポートを専門家がさらに再度チェックして、補足コメントなどを書き足して、レポートとして最終化する流れで行っています。

――PoCまでのデータ収集やアノテーションなどご苦労なさったと?

はい、アノテーションはとても時間がかかります。また、特徴的な損傷パターンはそもそも事例が少なく、学習させるためのインプットデータを揃えるところは苦労しています。

また、なんでもすべてAIでやろうとせず、データ取得方法、システムへのインプット方法、前処理、すでに世の中で実績のある手法など、どこでどのようなデータの状態にしていくのか、サービスの精度向上に効果が見込めるのかを見極めるための検証作業は継続して実施していかなければならないと考えています。

ブレードの傷を10パターンに分類-開発に約1年半

――開発期間は?

検討を始めたのが2018年の夏ごろです。実証実験がその秋ごろからです。そのタイミングではまずドローンで撮って、補修に使える画像が撮れるかというレベルから始めました。AIでアノテーションするレベルをあまり考慮していなかったのもあり、使えないデータがたまってしまったのが一つの苦労でした。

実際にシステム開発を始めたのが2019年の始めごろです。風車には、傷のパターンが10種類程あります。どのレベルの傷なのかを判定させるには、一つのモデルでは難しいのです。
そのため、まずは傷があるのかないのかの判定をさせるところにフォーカスしました。判定モデルを作ったのが2019年の夏ごろです。

その後、実際に損傷パターンのどれに当てはまるのかにフォーカスしてモデルを改良し、今年1月にα版を開発しました。

精度向上目指す

――精度を高める必要があると?

まだまだ精度を上げていかなければならないと思っています。損傷のある/なしを一次判定として行えるレベル、補修要否を加味して損傷を判定できるレベル、と実現レベルのステップを定めて、精度を高めていく必要があると考えています。

われわれは、一気通貫でやる体制が組めているので、人が精度を補てんできるため、サービス自体の品質は担保されていますが、よりシステムに任せる範囲を広げたいという考えです。

撮影機材やドローンの最新動向を踏まえて、実証実験を含め追加データの収集を継続して行っています。本年度の夏から、更なる精度向上に向け、開発を推進中です。

鈴木勇祐(すずき ゆうすけ)

アルビト株式会社
代表取締役

 

  • 2009年 大手シンクタンクに入社、システム開発、ITコンサルティングに従事
  • 2014年 コンサルティングファームに参画、業務/ITに関わるコンサルティングに従事
  • 2016年 ベンチャー企業にて、新規事業開発責任者としてIoTプロダクトなどの開発を推進
  • 2019年 アルビト株式会社設立、代表取締役に就任

 

(totalcount 229 回, dailycount 32回 , overallcount 2,495,116 回)

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