2020/07/17

2020/07/21

【独占】ファーウェイ、全領域のAI製品群に優位性ーG検定に匹敵する社内教育(中)

インタビュー

ライター:



スマートフォンの世界シェア2位の中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)は、高性能スマホといったモバイル製品にとどまらず、人工知能(AI)チップをはじめ、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、デバイスなど全領域をカバーするAI製品群とソリューションを提供している。

 

強力な人工知能(AI)計算能力を持つトレーニングクラスターAtlas 900が叩き出した世界最速記録が破られていないことも、その証左と言えよう。

 

ファーウェイは世界170カ国・地域で製品・サービスを提供。従業員数は約19.4万人に上り、うち約9.6万人が研究・開発(R&D)に従事する。日進月歩と言われるAIの研究・開発をキャッチアップするには、AI関連の基礎理論やAIを支えるディープラーニング(深層学習)といった手法など、先端技術の学習や最新情報の入手は欠かせない。

 

ファーウェイ・ジャパンCloud & AI 事業本部の鞏建農(ゴン・ジェンノン)本部長は先ごろ、AVILEN AI Trendの独占インタビューで、ファーウェイのコンピューティング戦略に加えて、パートナーとの提携強化の方針を明らかにしている。

 

そして、ファーウェイ・ジャパンCloud & AI 事業本部の秋元一泰 CTO(最高技術責任者)と林憲一 最高戦略責任者はこのほど、AVILEN AI Trendのインタビューに応じた。

 

秋元氏は、AI商品・サービスを「フルスタック(全てのレイヤー)で提供していることが強みです」と指摘。「中国ではAI活用が非常に進んでおり、事例をいち早く日本で展開できることや、AI製品だけではなく、モバイル、キャリア、サーバー/ストレージ/ネットワーク製品群とのシナジーが強みです」とも語り、多様なニーズにを応えられるAIソリューションを提供できることに優位性があるとの立場を強調した。

 

一方、林氏は、社内には非常に多くのAI教育プログラムがあると説明。自らが受講した講座を紹介し、「AIの歴史に始まり、線形代数、確率、統計というような数学の基礎、機械学習の基礎、ディープラーニング理論の基礎や、Pythonのプログラミング、フレームワークなど多岐にわたっており、JDLAのG検定に匹敵する内容だと思います」と語った。

「フルスタック」に強みーハードからソフトまで

秋元氏

ファーウェイの強みは、自社開発のAIチップをベースに、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、デバイスの全域をカバーするAI製品群を用意していることです。

特にエッジAIコンピューティングが強みです。エッジAI製品は、インフラに入っていくので、1回設置すると10年ぐらい使われるものなので、高品質かつ耐久性が要求されます。

ハードウェアをベースに、その上位のライブラリー、フレームワーク、AIモデル、さらにその上位のアプリケーションまでをフルスタック(全てのレイヤー)で提供していることがファーウェイの強みです。

クラウド、エッジ、デバイスなど全域カバー

秋元氏

ファーウェイの強みは、クラウドからデバイスまで全域をカバーする製品群です。最初に、一番左のものがAtlas900というAI大規模クラスターです。

二つ目が学習用チップAscend910を8個搭載したAtlas800という学習向けAIサーバーです。

三つ目がAscend910を1個搭載した学習向けPCIカードのAtlas300 model9000です。約300Wでダブルワイドでフルサイズのカードです。

左から四つ目から推論向けの製品群になります。Atlas300は、推論用チップAscend310を4個搭載しています。約70W、シングルワイドでロープロファイルのカードで、推論専用のアクセラレータカードです。

Atlas500はエッジ向けのステーションです。ファンレス構造ですので、ほこりの多い場所でも動作し、保証温度は摂氏マイナス40~プラス70度です。

普通のサーバーですとデータセンターに置かなければなりませんが、Atlas500はオフィスや工場の中など、かなり過酷な環境条件の所に置いていただいても安定的に動作するAIエッジステーションです。Ascend310 1個とARMベースのCPU 1個が搭載されています。

Atlas200はクレジットカード半分ぐらいのサイズで、消費電力約10W~5Wぐらいのモジュールです。Ascend310を1個と、8GBのDDR4メモリーを搭載しており、主にアームロボットやカメラ、搬送ロボットなどのデバイスの中に搭載して、デバイス自体をインテリジェント化するために使われる製品です。

世界最速59.8秒ーAtlas900 AIクラスター

 

 

秋元氏

Atlas900のビデオをご覧ください。深圳の近くの東莞にある弊社データセンターの中で、Atlas900が稼働しています。

Atlas900は、16キャビネットのAIクラスタです。1キャビネットに8台のAtlas800、トータル128台のAtlas800をネットワークで接続し、トータル1024個のAscend910が使われています。

この大規模クラスターAtlas900は2019年9月、AIトレーニングのパフォーマンスを測定するResNet-50を使ったトレーニングベンチマークテストで、59.8秒という世界新記録を出しました。この記録はまだ世界一を保持しています。

また、Atlas900は今年のInterop Tokyo2020のAI部門でアワードをいただきました。

Interop Tokyo2020でAI部門アワード

秋元氏

Atlas800は4Uの筐体に8個のAscend910を搭載し、トータル2PFLOPS@FP16の性能を叩き出す学習向けAIサーバです。ホストCPUには弊社で開発した48コアのARMプロセッサーKunpeng920を4個搭載し、空冷と液冷の二つのモデルを用意しています。

またAscend910から直接入出力される100Gイーサーネット(RoCEv2)により、Ascend910間での重みや勾配の更新を低レイテンシーで行うことが可能です。

Atlas500 AIエッジー過酷な環境でも安定稼働

秋元氏

Atlas500エッジステーションは、空調や冷却が整っていないエッジ環境でも安定して稼働するものです。全体で25Wの低消費電力、クラウドには4Gで繋がり、エッジ~クラウドへのシームレスな協調が可能です。エッジサーバーは大量に使用されるので、1台ずつ保守するわけにいきません。このため、クラウド上から複数のAtlas500に対して稼働監視、Firmwareのアップデートなど統合的なライフタイム管理ができます。

またクラウドからコンテナでデプロイする事により、Atlas500上で動作中のアプリケーション/アルゴリズムを動的に更新することができます。

JDLA活動に積極参加

林氏

ファーウェイは日本ディープラーニング協会(JDLA)のプラチナ賛助会員として、協会の活動に積極的に参加しています。こういった活動を通して、日本のお客さまが必要としていること、またAI導入を阻害しているような要因を深く理解したいと考えています。

これにより、日本のお客さまに役立つ、中国の先進のAI事例、あるいはAIのソリューションをご紹介できると考えています。 

G検定に匹敵ー社内教育システム

林氏

今、第3次AIブームと言われる中で、その中核のテクノロジー、ディープラーニングは非常に新しい技術です。この分野を学生時代に勉強した人は少ないので、社会人のいわゆる「学び直し」が大事だと考えています。

ファーウェイでは、「ファーウェイ大学」と呼ばれる社内の教育システムが充実しており、非常にたくさんのAIのプログラムがあります。

私も先日、AIのプログラムを一つ受講しました。AIの歴史に始まり、線形代数、確率、統計というような数学の基礎、機械学習の基礎、ディープラーニング理論の基礎や、Pythonのプログラミング、フレームワークなど多岐にわたっており、JDLAのG検定に匹敵する内容だと思います。

ファーウェイの社員全員が、エンジニアだけでなく、営業やサポートの社員も、このトレーニングを受けるようになっています。

個人的な意見ですが、ファーウェイのAI教育のレベルは非常に高いものだと思っています。このようなプログラムを社員が受講することにより、第3次AIブームIとファーウェイの製品の強みをきちんと理解し、日本のお客さまの課題を解決するために適切な提案ができると考えています。


秋元一泰(あきもと・かずひろ)氏

Cloud & AI 事業本部 CTO

日立製作所入社。最初の10年間にメインフレーム/スパコン用チップ開発。次の10年間にUNIXサーバ/x86ブレードサーバ開発に従事。3年半の米国でのサーバビジネス開拓を経験。

帰国後にパートナーとの共創を通じてFlash/FPGA/Networkなど他社の最新技術を活用したソリューション開発をリード。

現在、Huawei JapanでAI活用事例探索、および、AIビジネス開拓をパートナーと共に推進。



林 憲一(はやし・けんいち)氏

Cloud & AI 事業本部 最高戦略責任者

1991年、東京大学工学部計数工学科卒。同年富士通研究所入社し、超並列計算機AP1000の研究開発に従事。

1998年にサン・マイクロシステムズに入社。米国本社にてエンタープライズサーバー SunFire の開発に携わる。

その後、マイクロソフトでのHPC 製品マーケティングに従事。

2010年にNVIDIAに入社。エンタープライズマーケティング本部長としてGPUコンピューティング、ディープラーニング、プロフェッショナルグラフィックスのマーケティング、PRなどを担当。

2020年1月より現職。日本ディープラーニング協会(JDLA)のG検定、および、E資格を取得。

 

(totalcount 1,611 回, dailycount 3回 , overallcount 16,447,267 回)

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