2020/06/19
2020/07/18
【独占】コニカミノルタ、パートナーと画像IoT開発推進、実践でAI人材育成ー高槻サイトで
コニカミノルタ(東京都千代田区)IoTサービスPF開発統括部の岸恵一統括部長はこのほど、AVILEN AI Trendの独占インタビューに応じ、同社の強みとする画像AI(人工知能)と高速処理技術を駆使した画像IoTの開発について、今年秋に完成する関西の研究開発拠点(高槻サイト)でパートナー企業や研究者らと連携する方針を明らかにした。社内のAI人材育成強化の観点から、エンジニアが実践的に学習する場としてこの拠点を最大限活用する考えも示した。
目次
画像IoT開発が成長ドライバー
画像IoTは、AIを支えるディープラーニング(深層学習)などの手法で画像データや各種センサー情報を解析し、さまざまな現場での意思決定や判断を支援する技術。コニカミノルタは、画像IoT開発がIoT、データビジネスの成長ドライバーと位置付け、開発力のさらなる強化に向けて、高槻サイト(大阪府高槻市)を建設中だ。
岸氏は、画像IoTの研究・開発に関して、「AIや特にデータサイエンスは、座学の学習では限界があると感じており、やはり現場で実際に経験を積まないと得られないものも多数あると考えており、パートナーシップが必要です」と話した。
岸氏はその上で、社内のAI人材育成について、「この秋、大阪・高槻に研究開発棟を立ち上げますので、ここにオープンラボというような形でラボを設置し、パートナーやアカデミアといろいろ連携して、PoC(実証実験)も含め、実際にコニカミノルタのエンジニアが実地で学べる場を提供して、今後さらに伸ばしていきたいと考えています」と語った。
「HitomeQ」と「Go Insight」
また、岸氏は、人工知能(AI)を活用した主力商品について、介護施設向けICT運用支援サービス「HitomeQ(ひとめく)」と店舗の天井カメラ画像から顧客の属性、滞在、棚前行動をデータ化して分析するコンサルティングツール「Go Insight」を紹介。「コニカミノルタのアルゴリズムの一番の特徴は、天井から撮影する画像で解析を行っているということが、一番の技術的な優位性だと感じています」と述べた。
岸氏の発言は次の通り。
座学には限界ーAI・データサイエンス
――画像IoT開発と社内の人材育成は?
今、AI人材を増やしていくことを二つの側面でやっています。一つは社内の人材の育成です。人事制度上、いろいろな社内教育や認定制度を設けて進めています。これにより、社内の人材のレベルアップを図っています。
ただ、AIや特にデータサイエンスは、座学の学習では限界があると感じており、やはり現場で実際に経験を積まないと得られないものも多数あると考えており、パートナーシップが必要です。この秋、大阪・高槻に研究開発棟を立ち上げ、オープンラボを設置し、そこでパートナーやアカデミアといろいろ連携して、PoC(実証実験)も含め、実際にコニカミノルタのエンジニアが実地で学べる場を提供して、今後さらに伸ばしていきたいと考えています。
強みは海外売上比率80%
――コニカミノルタの主力商品とその強みは?
コニカミノルタの主力商品は今ですとオフィス向けのコピーやプリンター事業です。複合機がメインの商品です。
コニカミノルタの特徴は、売上比率の約80%が海外です。これがコニカミノルタの特徴でもあり、強みだと思っています。世界150カ国ぐらいに販売網を持っており、顧客は基本的にBtoBの会社で、200万社よりもさらに多くのリーチを持っているのが最大の強み、特徴だと思っています。
歴史を振り返ると、コニカとミノルタの2社が統合してできた会社で、両社が扱っているのが画像です。コニカはフィルム系、ミノルタはカメラ系を基礎とするDNAを強く持っている会社です。そこを生かして、今後も事業としては進めていきたいと思っています。それを今後の強みとして生かしていきます。
AIアルゴリズムを社内外に提供ーIoTサービスPF開発統括部
――統括するIoTサービスPF開発統括部とは?
4月からIoTサービスプラットフォーム開発統括部を見ています。ミッションは、コニカミノルタ全社に対して技術を提供する組織です。基本となるのは画像IoT、AI技術を融合して、さらに発展させていくということです。AIのアルゴリズムを社内外に提供するインフラのアーキテクチャーをどう広めていくか、どうやって使っていくかということで、それを使う人財の育成を含めて、全てこの部門で見ているという形です。
――AIに関わる主力商品は?
コニカミノルタは画像がメインの会社です。強みである画像のエリアに特に注力して開発を行っています。一つが、介護施設向けICT運用支援サービス「HitomeQ(ひとめく)」です。これは介護施設内で要介護者が倒れたかどうかを姿勢で判定できるものです。
もう一つが、AIを活用したショッパー調査パッケージ「Go Insight」です。「Go Insight」は、リアル店舗の天井カメラ画像から顧客の属性、滞在、棚前行動をデータ化して分析するコンサルティングツールです。
特に店舗のマーケティングが重要だと考えています。もちろんPOS(販売時点情報管理)データから得られるのですが、お客さまが手に取ったけれども、戻したというのは重要な情報です。コニカミノルタはAIを活用して、人間の骨格から姿勢を解析する技術を活用しています。
天井から撮影する画像の解析に優位性
一般的に、横からの映像で解析をしていると思うのですが、コニカミノルタのアルゴリズムの一番の特徴は、天井からの画像で解析を行っているということが、一番の技術的な優位性だと感じています。
なぜ横からではなく、上からの画像が重要かと言いますと、介護の施設や店舗で、カメラが目の前にあると、患者さんやお客さまは構えてしまいます。それをどうやって緩和するかということを考え、天井からの画像で解析するというのが一番の技術的なポイントです。これが最大の特徴です。
例えば介護施設では、病室の天井にカメラを一つ。ベッドの上にカメラを一つ置くと、天井のカメラの画像から、患者さんが転んだのか、ベッドの上に座ったのかということを判定できる形になっています。
――この二つが主力商品ということですね?
そうですね。われわれコニカミノルタ内で、コア技術を開発している部門です。われわれが開発する技術を会社がサービスとして展開しています。
ただ、このようなAIの技術やサービスは、コニカミノルタ1社だけでは決してできませんので、パートナーシップも含め、全体として展開していく形での対応を考えています。
――統括部のメンバーは?
私の部門は、東京と大阪で技術開発を進めています。AIのアルゴリズムを開発しているメンバー、得られたデータの解析を行うデータサイエンティスト、それをシステム化するアーキテクチャー設計者などです。
コニカミノルタのもう一つ特徴は、メーカーとして、デバイスを製造するところが非常に重要なキーパーツになります。ハードウェアとAIというのが特徴です。
コニカミノルタが正面を切って、グーグル、Amazonとやっても、ジェネラルなAIでは、やはり向こうのほうが1歩、2歩先に行っているとは思うので、コニカミノルタとしては、メーカーとしてのAIってどうしていくかと考え、一つ目は、画像を活用するということです。
――「HitomeQ」のAIやアルゴリズムの開発期間は?
一番最初の事例ですので、かなりな時間をかけています。リリースはしましたが、まだ終わったわけでは決してありません。日々改善を続けているというところです。数カ月という単位ではなくて、年単位でやってきたというのが実情です。かなり前から取り組んできて、やっと芽が出てきたという状況です。
アルゴリズムのみならずハード含むシステム開発に強み
――Go Insightの特長は?
店舗の方も同様で、同じテクノロジーを使っていますが、店舗に設置するため、小型化しなければならないというシステムとしての課題がありました。AIのアルゴリズムで、GPU(画像処理半導体)を使って、大きな電力を使えばすぐ撮れるということ分かっているのですが、それを店舗に置くとなると、電源をどうするかという問題も出てきます。アルゴリズムだけでなく、ソフトウェア、ハードウェアを含むシステム開発をできたというのがコニカミノルタの強みです。
岸 恵一(きし けいいち)氏の略歴
1997年、大学でコンピュータサイエンスを専攻し、大手電機メーカーに入社。携帯電話の組み込みソフト開発に従事。 1999年、外資系ソフトウエア企業に転職し、グローバルと関わりながらパソコンのOS開発チームにてリーダーを務める。 2016年、ハードとソフト両方に関わりたいとコニカミノルタへ入社。IoTエッジプラットフォームの開発を担当し、2017年4月アーキテクチャ開発部長。 2020年4月よりIoTサービスPF開発統括部を統括。 コニカミノルタにおける画像IoTビジネスに必須のAI技術、プラットフォーム技術の開発および画像IoT人財強化を担当。 |
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