2020/10/14
2022/08/12
JDLAとは?G検定、E資格の認定プログラム、合格者の会など紹介!
日本ディープラーニング協会(JDLA)は、ディープラーニング(深層学習)技術で日本の産業競争力の向上を目指す団体だ。人工知能(AI)技術は日進月歩で進化を続け、今ではインターネットやテレビ、新聞、雑誌などでAIにまつわる情報を見聞きしない日はない。
世の中に初めてAI(Artificial Intelligence)という言葉が登場したのが1956年。それ以来、1950代後半~60年代の「第1次AIブーム」、80年代の「第2次AIブーム」を経て、2010年代にスタートした「第3次AIブーム」は現在も進行中だ。
「第3次AIブーム」の中核となっているのがディープラーニング(深層学習)という技術。このディープラーニングの活用を普及させるために2017年に設立されたのが一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)だ。
JDLAはどのような組織で、どのような活動を行い、どのような責任を担っているのか--。AVILEN AI Trendが掘り下げて検証する。
目次
JDLA(日本ディープラーニング協会)とは?
理念
JDLAは、Japan Deep Learning Associationの略で、「一般社団法人 日本ディープラーニング協会」を指す。
JDLAは、ディープラーニングを中心とする技術で日本の産業競争力の向上を目指して設立された団体だ。JDLAの理念は、AI技術、特にディープラーニングを活用できるAI人材(機械学習エンジニアやデータサイエンティストなど)を育成することだ。
JDLAの理事長を務めるのが、日本でAI研究の第一人者と言われる東京大学大学院の松尾豊教授だ。松尾氏はJDLA公式ウェブサイトで、ディープラーニングは「ものづくりと相性がよい」ことから好機だと指摘し、日本でのディープラーニング産業の早期拡大に向けて、人材育成の重要性を唱えている。
松尾氏が人工知能の全体像やディープラーニングなどを広く紹介した著書「人工知能は人間を超えるか -ディープラーニングの先にあるもの」(2015年、角川EPUB選書)は、「AI入門書」的な書籍として幅広い層に読まれている。
また、松尾氏が率いる東大松尾研究室(松尾研)は、ディープラーニング研究にとどまらず、企業との連携や起業家育成に積極的にも取り組んでいる。
ディープラーニング
ディープラーニング(深層学習)は、人間が自然に行うタスクをコンピューターに学習させる機械学習の手法の一つだ。人間が特徴量を手動で作成する必要はなく、大量のデータはディープラーニングのアルゴリズムに入力され、コンピューターが出力を決定するために最も最適な特徴量を自動的に学習するという点が最大の特徴だ。
5つの活動-産業活用促進、人材育成など
JDLAはこのディープラーニング技術を事業の柱に据える団体や企業や有識者らが中心となり、「産業活用促進」「人材育成」「社会提言」「国際連携」「理解促進」という5つの活動を積極的に展開。とりわけ「人材育成」に力を注いでいる。
活用促進 |
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人材育成 |
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社会提言 |
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国際連携 |
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理解促進 |
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協会会員は正会員・有識者 有識者・賛助会員・行政会員の4種類
JDLAの会員は正会員、有識者正会員、賛助会員、行政会員の4種類で構成される。
ディープラーニング事業を核とする企業、およびディープラーニングに関わる研究や人材育成に注力している有識者、正会員二社(名)以上の推薦と理事会の承認を経て入会資格を得る。
会員は理事、委員として協会を運営、総会への出席(議決権あり) などの活動を行う。
正会員企業
(2021/9/17現在)
ABEJA | Aidemy | AnyTech |
AVILEN | ブレインパッド | 調和技研 |
connectome.design | ディープコア | エッジテクノロジー |
FiNC Technologies | GAUSS | GHELIA |
GRID | HEROZ | IGPIビジネスアナリティクス&インテリジェンス |
イクシス | 株式会社キカガク | KUNO |
Liaro | MUSASHI AI | NABLAS |
ニューラルポケット | エヌビディア合同会社 | ペカラジャパン合同会社 |
PKSHA Technology | Ridge-i | Rosso |
SECURE | スキルアップAI株式会社 | 株式会社スマートモア |
tiwaki | zero to one |
正会員企業のほか、有識者の正会員や、賛助会員も参画。AI・ディープラーニングの研究・開発はもとより、ビジネスでのAI利活用やAI人材育成に携わる個人、法人、団体が名を連ねる。
有識者正会員(敬称略)
浅川伸一 東京女子大学情報 処理センター 博士 |
石川冬樹 国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系 准教授 先端ソフトウェア工学・国際研究センター 副センター長 |
牛久 祥孝 株式会社Ridge-i 取締役 CRO / オムロン サイニックエックス株式会社 プリンシパルインベスティゲーター |
江間有沙 東京大学 未来ビジョン研究センター 特任講師 |
岡崎 直観 東京工業大学情報理工学院 教授 |
岡谷貴之 東北大学大学院 情報科学研究科 教授 |
尾形哲也 早稲田大学 基幹理工学部表現工学科 教授 |
柿沼太一 弁護士法人STORIA法律事務所 代表パートナー弁護士 |
北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長兼所長 システム・バイオロジー研究機構 会長 |
顧 世翔 Shixiang Shane Gu グーグル/グーグルブレイン 研究員 |
工藤郁子 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター プロジェクト戦略責任者 |
鮫島正洋 弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 代表パートナー弁護士 |
巣籠悠輔 東京大学大学院 工学系研究科 招聘講師 |
中島秀之 札幌市立大学 理事長・学長 |
藤吉弘亘 中部大学 工学部ロボット理工学科 教授 |
松尾豊 東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授 |
丸山宏 株式会社Preferred Networks PFNフェロー |
山下隆義 中部大学 工学部情報工学科 准教授 |
賛助会員
JDLAの目的に賛同し、ディープラーニングの社会実装よ人材採用に意欲的な企業や団体が参加する。
PLATINUM
華為技術日本株式会社 | 有限責任監査法人トーマツ デロイト トーマツコンサルティング 合同会社 |
株式会社ベイカレント ・コンサルティング |
GOLD
富士ソフト株式会社 | 株式会社安川電機 |
フューチャー株式会社 | 株式会社丸井グループ |
株式会社三井住友銀行 | 野村ホールディングス株式会社 |
株式会社日立システムズ | ウエスタンデジタル |
SOMPOホールディングス株式会社 | 矢崎総業株式会社 |
Alibaba Cloud Japan |
SILVER
西川コミュニケーションズ 株式会社 |
株式会社ジェイテクト | 株式会社NTTドコモ |
株式会社ステッチ | グーグル合同会社 | 太陽誘電株式会社 |
株式会社 トップエンジニアリング |
株式会社シー・アイ・シー | KDDI株式会社 |
ジャパニアス株式会社 | 日本電気株式会社 | 日本マイクロソフト 株式会社 |
株式会社 電通 | 中外製薬株式会社 | セレブラス・システムズ株式会社 |
株式会社サードウェーブ | 株式会社アガルート | PwCコンサルティング合同会社 |
第一工業製薬株式会社 |
賛助会員
JDLAの目的に賛同し、ディープラーニングの産業・社会実装および人材育成の活動に協力する地方公共団体ならびに都道府県および市町村などに置かれる教育委員会が参加する。
地方公共団体
宮城県 仙台市 | 栃木県 那須塩原市 | 東京都文京区 | 新潟県 |
新潟県 長岡市 | 長野県 塩尻市 | 愛知県 豊田市 | 香川県 三豊市 |
高知県 | 大分県 | 大分県 大分市 | 宮崎県 都城市 |
教育委員会
広島県教育委員会 | 山口県教育委員会 |
AI資格試験 「G検定」・「E資格」を主催
JDLAは、特に注力している活動である「AI人材育成」の一環として、ディープラーニングに関する知識を持ち、事業に活用する人材(ジェネラリスト)」と認定する「G検定」と、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有する人材(エンジニア)として認める「E資格」という2種類の資格試験を主催している。
受験者数は近年大幅に増加しており、エンジニアや事業者、学生、経営者など幅広い層が受験している。合格すると合格証、合格者ロゴ、2つの資格試験の合格者が参加するコミュニティ「CDLE(シードル、Community of Deep Learning Evangelist)」のメンバーになることができる。
G検定-AIジェネラリストを認定
G検定は「ディープラーニングに関する知識を有し、事業活用する人材(AIジェネラリスト)」を認定する資格試験だ。オンライン形式で受験し、試験中にインターネットなどで情報を検索することが可能だ。
受験料は13,200円(学生は5,500円)。G検定に関する詳しい情報は次の記事にふんだんに盛り込まれている。
G検定2021#3試験では、受験者7,399人、合格者は4,769人で、G検定の累計受験者数は6万人を突破した。
デジタルリテラシー協議会において、これからのすべてのビジネスパーソンが持っておくべき共通デジタルリテラシー「Di-Lite」領域の範囲に位置し、注目が集まっている資格である。
G検定とその対策に関して、次の記事で詳しく解説している。
E資格-AIエンジニアを認定
E資格は「ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有している人材(エンジニア)」として認定する資格試験で、会場で受験する形式をとる。
2018年から2021#2までの受験者数・合格者数・合格率の推移は以下の通り。
E資格とその対策に関して、次の記事で詳しく解説している。
日本ディープラーニング協会E資格認定プログラム
E資格のJDLA認定プログラムは、受験資格を得るための教育プログラムで、認定を受けた教育実施事業者が提供する講座を受講、修了する必要がある。2021年9月末現在、認定プログラムを提供するの主に15事業者だ。
次の記事はE資格認定プログラムの特徴を比較して詳しく解説している。ディープラーニング講座の料金プランなどの違いが確認できるので、ぜひ参考にしてほしい。
JDLAのイベント
JDLAはディープラーニングの産業活用と人材育成などを促進するため、G検定、E資格取得の試験のほかにも、さまざまなイベントを企画、開催している。
合格者コミュニティ「CDLE(シードル)」
CDLEは、JDLAのG検定・E資格の合格者同士の交流・情報交換の場を創出するとともに、ディープラーニングを実際のビジネスシーンで活用するための互助コミュニティだ。
- CDLE勉強会は、CDLEメンバーの知見を広げるため、ディープラーニングの有識者が講演するイベント。G検定・E資格の保有者が、最先端AI技術などに関する情報・意見交換の機会として積極的に参加している。
- CDLE LT会は、CDLEメンバーが、プレゼンテーションと質疑応答を行うなど、学び合い・交流のイベント。「LT(ライトニング・トーク)」は直訳すると「稲妻のように短い講演」を意味し、いわゆる研究成果などを発表する短いプレゼンテーションの機会と位置付けられている。
過去のLT会の例
参加者数 | テーマ | 発表者 |
1646 | 世界初の水質判定AI 「DeepLiquid(ディープリキッド)」 |
AnyTech 代表取締役 島本佳紀 |
1294 | ABEJAのデジタルトランスフォーメーション 〜AIが実現するプロセス革命〜 |
ABEJA 代表取締役社長CEO/共同創業者 岡田 陽介 |
703 | AIの社会実装を進めるための技術的ポイント | ニューラルポケット株式会社 取締役/最高技術責任者 佐々木 雄一さん |
1014 | MIRU長尾賞受賞論文解説 | 中部大学 工学部ロボット理工学科 教授 藤吉 弘亘 |
787 |
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CDLEメンバー |
724 | HEROZのAI社会実装事例紹介 | HEROZ株式会社 取締役 井口 圭一 |
出典:connpassから抜粋(以上、敬称略)
DCON(ディーコン)
「DCON(ディーコン)」は、ディープラーニングと、ものづくり技術を駆使して創出した事業の内容を競う「全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト」。潜在的に大きな可能性をもつ高専生が新事業に生み出す機会となっている。
オンラインセミナー
出典:マスメディアンのプレスリリース
2020年9月にはマーケティング・クリエイティブ職専門に就職支援を手掛けるマスメディアンが開いた連続6回の文系学生向けのAIオンラインセミナー(参加無料)「AIを活用して、よりクリエイティブな仕事キャリアを~文系・芸術系の大学生がAI人材になるには~」にJDLAが協力した。
「人工知能とはなにか?」から始まり、「文系のための『AI職』養成講座」、「広告・マーケティングにおけるAI基礎知識」などのテーマに至るまで、実践するAIスタートアップ企業のトップなどが熱弁をふるった(以下、敬称略)。
このほか、G検定・E資格試験の合格者に、受験動機や勉強方法、合格のコツなどについての話を聞く「合格体験談オンラインセミナー」や、学会やイベントの最新情報を、JDLAの正会員および賛助会員向けに伝える「ディープラーニング最新情報勉強会」などのセミナーも開催している。
ディープラーニング活用事例の収集・発信
JDLAは研究開発段階から一定の成果が出ている実装段階の事例まで、日本各地でのディープラーニングの活用事例を収集。収集した事例を書籍として出版したり、選考会で表彰する活動を通じた世の中への普及に努めている。
ディープラーニング活用の教科書
日経クロストレンドが編集、JDLAが監修したディープラーニング活用書の第1弾。カツ丼の盛り付けの判定や、泳ぐマグロの数の計測、クリーニング衣類の判別、文章校閲、仮想アイドル画像の生成など、ディープラーニングの活用事例を紹介している。
ディープラーニング活用の教科書 実践編
同じく日経クロストレンドが編集、JDLAが監修監修したディープラーニング活用書の第2弾。前作より実践的な活用事例として、「ディープラーニングビジネス活用アワード」の受賞6プロジェクト全てを子細なケーススタディで紹介。キユーピー、楽天、NTTドコモ、フジクラ、荏原環境プラント、リコーなどの活用事例が集約されている。
ディープラーニングビジネス活用アワード
JDLAがディープラーニングをビジネスに活用している事例を表彰する選考会だ。2019年秋に初開催され、キユーピーの「AI食品原料検査装置」が大賞を、JDLA正会員のAnyTechが世界初の水質判定AI「DeepLiquid(ディープリキッド)」が優秀賞を受賞した。
まとめ
- JDLAは、ディープラーニングを中心とするのAI技術で日本の産業競争力の向上を目指す団体
- 「活用促進」「人材育成」「社会提言」「国際連携」「理解促進」という5つの活動を積極的に推進
- 特に注力している活動である「AI人材育成」の一環として、「G検定」と「E資格」という2種類の資格試験を実施している
- そのほかにも、イベント開催や活用事例の普及などを通して、ディープラーニングの普及に努めている
経済産業省は「AI人材需給に関する報告書」で、AI市場の需要伸びが「平均シナリオ(年16.1%)」の場合として、国内でAIエンジニアなどの人材不足数が2025年に8万8460人、2030年には12万3718人に上ると試算している。
出典:経済産業省「AI人材需給に関する報告書」
「第3次AIブームの」によるAI活用の広がりや「コロナ禍」に伴うリモートワークの浸透、企業によるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の動きも相まって、日本国内でもAI・ディープラーニング技術の利活用と、AI人材のニーズが一段と高まる公算が大きい。JDLAが双肩に担っている責任は、確実に重みを増している。
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